私たちの時間は、味のなくなったガムみたいだ。――映画『最後の日はガムのように』は、どんな作品?
「この幸せな時間が、ずっと続けばいいのに」
大切な人と過ごす一日の中で、誰もが一度は抱くであろう、ささやかな願い。 もし、その「最後の一日」を、魔法のような力で永遠に繰り返せるとしたら。 あなたなら、その時間をどう過ごしますか?
私たちFilms I2Uが制作する最新作、短編映画『最後の日はガ-ムのように』は、そんなSF的な問いかけから始まる、切ないタイムループ・ロマンスです。しかし、この物語が描くのは、単なる空想や恋愛だけではありません。それは、愛とエゴ、過去と未来、そして「別れ」の本当の意味をめぐる、一人の青年の魂の成長の記録です。
あらすじ
恋人の佐穂(さほ・27)から、海外転勤による突然の別れを告げられた斎人(さいと・25)。 しかし翌朝、なぜか昨日と同じ朝が再び訪れる。最初は夢だと思ったその日は、昼過ぎに感じる奇妙なデジャヴ、そして夜に繰り返される同じ別れ話によって、彼を混乱の渦に突き落とす。
彼は、二人の思い出の写真がきっかけとなり、自分が同じ一日を繰り返す“タイムループ”に囚われたことを自覚する。
「なぜ別れるのか」。その真意を突き止めるため、そして何より彼女との時間を失わないため、斎人は自らループの主となることを決意。言葉を先読みし、行動を予言し、別れを知っているからこそ、その時間を慈しむように完璧な一日を創造していく。
だが、未来のない繰り返しは、やがて甘美な時間を虚無感で蝕んでいく。彼の行動は次第にエゴへと変貌し、二人の関係は最悪の形で決裂。ループは強制的に終わりを告げる。
全てを失い、時間が正常に進む世界に戻された斎人を待っていたのは、後悔と暗闇の日々だった。そして引っ越しの日、彼は一枚だけ残された写真を見つける。
本当の愛の意味を知った彼は、前に進むため、そして彼女に誠実な別れを告げるため、最後のループに臨むのだった。
この映画で描きたいこと
1. タイムループという「心の牢獄」 本作におけるタイムループは、単なるSFのガジェットではありません。それは、私たちが失いたくない過去の幸せな記憶に囚われてしまう、「心」そのもののメタファーです。主人公の斎人が囚われるのは、心地よく、しかし停滞した楽園。誰もが持つであろう「過去に固執してしまう弱さ」を、タイムループという装置を使って描きます。
2. 「ガムのように」失われる時間の色 この少し変わったタイトルは、ループの本質を表しています。最初は甘い味がするのに、噛み続けるうちにやがて味がなくなっていくガムのように。幸せだったはずの「最後の一日」も、無限に繰り返される中で、次第にその輝きを失い、虚しいだけの行為に変わっていきます。永遠に続く甘い時間など、本当は存在しないのかもしれない。その切実な事実に、主人公はどう向き合っていくのでしょうか。
3. 本当の愛とは何か この物語の最大のテーマは、「本当の愛とは何か」という問いです。相手を自分の元に縛り付け、変わらない「今」を強要することは、愛なのでしょうか。それとも、たとえ離れ離れになったとしても、相手の未来を心から応援することこそが、本当の愛なのでしょうか。斎人がループの果てに見つけ出す、その答えに注目してください。
主要登場人物
- 斎人(さいと・25歳) まだ大学時代の感性が抜けきらない、ロマンチストな青年。古着やコーヒー、フィルムカメラなど、自分の「好き」で世界を固めることにこだわり、一度好きになったものを長く愛し続ける。その執着は、恋人である佐穂にも向けられ、彼女を失うことを恐れるあまり、時間を止めるという選択をしてしまう。彼の弱さと成長が、この物語の縦軸となります。
- 佐穂(さほ・27歳) 大手外資系金融に勤める、プロフェッショナルなキャリアウーマン。未来志向で、常に自分をアップデートし続ける努力家。斎人のロマンチストな部分に惹かれつつも、過去に安住する彼との間に、少しずつ価値観のズレを感じています。彼女の「別れ」という決断は、自分自身の未来を誠実に生きるための、勇気ある一歩として描かれます。
映像で語る物語
この映画では、セリフだけでなく、映像そのもので登場人物の心情を表現することにこだわります。物語の舞台となる**「本郷」の街並みは、時に斎人の心を映す鏡となり、ループ中の「暖色系」の温かい世界と、ループ後の「寒色系」**の冷たい世界という色彩設計は、彼の感情の旅路を視覚的に描き出します。
最後に
映画『最後の日はガ-ムのように』は、現在、素晴らしいキャスト・スタッフと共に、本格的な制作準備を進めています。 この映画が、観てくださった方々自身の「過去」や「別れ」、そして「未来」について、少しだけ思いを馳せるきっかけになれたら、これほど嬉しいことはありません。
どうぞ、完成をご期待ください。